解語の花


 美人はよく喋る。饒舌でこの世界のありとあらゆるものを、その舌と美貌で絡め取ってしまいそうなくらいには。
 花が綻ぶよりも愛らしく、花が散るよりも儚げな美人は聡明だった。花についている脇役の葉。そんな瞳の色をした美人は金糸を揺らすこともせず、膝の上に頭を乗せて寝そべっている。

「言っても伝わらねぇよな」
「どうしたの、急に」
「伝わらねぇのにわざわざ言葉にすんのも馬鹿だよな」
「言わなきゃ始まらないから言うんでしょ」

 饒舌な美人が何を言うかと思えばそんなことだった。ありふれた疑問をふと言葉にする美人はとても遠くを見つめているような気がした。
 葉の色をした瞳を細めて、自分を見つめているかと思えば白魚のような指が頬に伸びて来て、美人は微笑んだ。
 分かり切っていて、割り切っていて、だからこそ辛いような笑みを浮かべて、辛そうに言う。

「好き、だよ。フランシス……」

 美人は泣きそうに言う。
 その様子は花が散ってしまう一歩手前の、一番悲しい時期と同じように見えた。

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