花一匁


 勝って嬉しい花一匁。
 負けて悔しい花一匁。
 さぁ、今日は誰を貰おうか。

「私の勝ちですね」

 突き付けられた鈍色に光る刀。深緑の瞳にうつるのは自分を見下ろす日本。イギリスは老いぼれである日本に負けた。方法は何でもよかった。ゲームでもカードでも。けれど、日本は言った。
 それでは貴方が詰まらないでしょうから、喧嘩でもしてみますか。
 と。いたって穏やかな口調で、イギリスを孫とでも思っているかのような様子だった。
 それはそれは、丁寧な殴り合いだった。喧嘩に≪丁寧≫という言葉が似合うかは分からないが。
 ひとつひとつ花を選ぶように、繊細に、丁寧に、細やかに。相手を倒す為にどの手を打つか。それを瞬時に、正確に日本は選びとっていた。
 イギリスとは違い、随分と頭を使う喧嘩の仕方だと負けた今、思う。

「テメ、全然老いぼれてなんかいねぇじゃねぇか……! それに、刀!」
「たまたま置いてあった刀を取っただけですよ。ちゃんと考えて戦わないと」
「ちっ」

 詭弁だと思う。けれど、負けてしまったからには口は出せない。そこはプライドがあるからだろう。
 花で例えるならば、日本は選ばれる側だろう。イギリスは選ぶ側。
 色とりどりの花をひとつひとつ吟味して自分が思う一番キレイな花を選ぶ側は選びとる。子供の遊びのように、真剣になって、美しいものをどんな手を使ってでも手にいれたいものを、選ぶ。
 その為の喧嘩。選んで選んで、日本だと思った。日本を手に入れたいと思った。だから、勝負を持ちかけたのだった。

「勝って嬉しい花一匁、負けて悔しい花一匁」
「何だそれ」
「子供の遊びですよ。欲しい人をそれぞれが選んで、勝ったら欲しい人を手に入れる。単純、でもとても深いですよね。遊びと言っても、その人が欲しいと望むのは何かがあるからでしょう。貴方もそうでしょう?」

 イギリスは静かに頷いた。日本はにっこりとほほ笑み、私もです、と静かに言葉を落とす。

「私は貴方が欲しいんですよ、イギリスさん」


 勝って嬉しい花一匁。負けて──、嬉しい花一匁。

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